a part of ふとん

ふとんと一体化しながらも、あかるく生きるかめさんの観察記。

蚊が鳴くように

カメさんがうつだと診断されてから。

 

特に落ち込んでいる時には声がとても小さくなるようだ。

 

それはそれは、蚊の鳴くようなか細い声で話す。

 

 

もはや話すというよりも、自分の心の声が漏れてしまったかのような、独り言のような調子である。

 

でも、発し終わったあと、私が返事をしないと、こちらをじっと見てくる、という具合だ。

 

何度も「え?」と問い返すわたしに、カメさんはビビり、萎縮し、自分の甲羅の中に頭を引っ込めてしまう。

 

 

こうなってしまうと本当にカメさんだ。

 

 

 

 

カメさんが完全無敵に元気だった頃、声が非常に小さい共通の友達のことが話題にあがり、「Aくんは声が小さいと思ってたけど、そう感じてたのは自分だけじゃないんだねー」という話になったことがあった。

 

それくらいには、カメさんの耳は正常であるはずだった。

 

 

 

私がうつ経験者(なう)であるから、とかカメさんには関係ないのである。

 

 

一定の時間、例えば私が働いている間の10時間くらいがたってしまうと、カメさんは完全に孤立するようだった。

 

自分だけがこの世界の住人であり、ほかの一切のひとは宇宙人なのである。

 

非常に警戒する。

 

甲羅の内側から外界を覗き見るカメさんになるのである。

 

 

 

ぼくは、ふとんの一部になりました。

「ぼくは、ふとんの一部になりました。」

 

 

 

今日はなにをしてたの?

 

真夏の日差しを避けて快適な家から一歩も出ず、ただただ流れる時間をやり過ごす彼に、仕事から帰宅する私が問いかけるおきまりの言葉。

 

 

そして彼は、これまたお決まりのように答える。

 

ぼくは、ふとんの一部になりました、と。

 

 

 

 

たったこの一文だけで。

 

彼がどんな気持ちで1日を乗り切ったのか。私に対面するのにどれほどのエネルギーを要したのか。(たとえそれが2年以上の月日を共に過ごした相手だとしても)

 

 

私は理解する。

 

 

彼の肉体が纏うグレーな重たい空気に。彼の奥に敷きっぱなしになっている敷布団に。取り込んだまま畳まれることなく、くしゃっと無作為に積まれた洗濯物たちに。

 

 

私は身体全体で感じとる。

 

 

 

 

彼がうつと診断されて、3ヶ月。

10年前にうつと診断された私と暮らす、彼の観察日記です。

 

 

気ままにぽつぽつ更新します。